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FILE 0521 世紀前半DECLASSIFIED

GIMBAL / GOFAST 映像

2014-2015 年 — USS ルーズベルトの東海岸遭遇

2014 年から 2015 年にかけて、東海岸で訓練していた米海軍空母 USS セオドア・ルーズベルト打撃群の F/A-18F パイロットたちが、ほぼ毎日のように UAP との遭遇を報告。ATFLIR ポッドが捕捉した GIMBAL(旋回する物体)と GOFAST(高速で海面を横切る物体)の 2 本の映像が、2020 年 4 月 27 日にニミッツの FLIR1 と同時に正式公開された。

GIMBAL 映像内の物体の旋回軌跡ATFLIR · BLK / WHT · IRREC ●ALT: 25,000 ftT+00:35UAPROTATION OBSERVED物体は雲の上空で軸を傾けながら旋回AARO 解析: ATFLIR ジンバル機構の動きとの相互作用が回転を強調した可能性AARO Historical Record Report Vol.1 (2024)

CONTEXT

なぜこの事件が重要なのか

GIMBAL/GOFAST が衝撃的なのは、「単発の事件ではなく、現役の戦闘部隊で連続的・日常的に遭遇していた」 という事実です。ニミッツ事件が「あの 1 日の出来事」だったのに対し、こちらは 「2014-2015 年の訓練海域で持続的に観測された通常運用の障害」 だったのです。

2023 年の議会証言でライアン・グレイブス元中尉が述べたのは、「現役パイロットは UAP を報告することにスティグマ(汚名)を恐れている」 という制度的問題です。報告すれば「正気を疑われる」ため、本来あるべき安全インシデントとして扱われていなかった。これを受けて 2019 年に海軍は UAP の正式報告手続き を策定しました。

AARO は 2024 年の解析で、GIMBAL の旋回はジンバル機構のロック動作との相互作用、GOFAST の絶対速度は実は風速程度 という説明可能性も提示しています。一方で物体の存在自体は否定しておらず、「未識別」の分類のままです。

この事件群が引き出した最大の制度変化は、2022 年の AARO(全領域異常解決局)の設置 と 2026 年の PURSUE(公開アーカイブ)の開始 です。「報告できる経路」と「公開できる枠組み」という、それまで存在しなかったインフラが整備されました。

GLOSSARY

知っておくと読みやすい用語

GIMBAL/ジンバル/
雲の上空で 物体が旋回(軸を傾ける)動作 を見せた約 35 秒の赤外線映像。タイトルは ATFLIR ポッドの「ジンバル機構(カメラを回転させる機械)」に由来。乗員の音声には「あれを見てくれ、なあ」「あんなのが艦隊の上を飛んでいる」という驚きの声が入っている。
GOFAST/ゴーファースト/
2015 年 1 月 21 日撮影の約 30 秒映像。海面すれすれを横切る小さな物体 を ATFLIR が追跡した。当初パイロットは「すごい速さだ!」(→ Go Fast の名前の由来)と興奮したが、後の解析では カメラの追従角速度が大きく、物体自体の絶対速度は風速程度の可能性 も指摘される。
USS セオドア・ルーズベルト (CVN-71)
米海軍ニミッツ級原子力空母。2014-2015 年は東海岸の海軍航空基地オーシャナで実施されていたパイロット訓練に従事し、新型 ATFLIR システムの本格運用を開始した時期。
TTSA (To The Stars Academy)
Blink-182 の元メンバー Tom DeLonge が 2017 年に設立した民間組織。元情報・国防当局者を擁し、UAP 映像の非公式公開(2017 GIMBAL / 2018 GOFAST)で議論の火付け役となった。後に商業展開で物議を醸す。
ジンバルロック
カメラの回転機構(ジンバル)が特定角度に達して物理的にこれ以上回せなくなる現象。AARO の解析では、GIMBAL 映像で物体が「回転している」ように見えるのは、実はカメラ自身がジンバルロック近傍で動いた結果ではないか と提示されている。

ARCHIVE PHOTOS

原子力空母 USS セオドア・ルーズベルト (CVN-71)

原子力空母 USS セオドア・ルーズベルト (CVN-71)。2014-2015 年の東海岸訓練中に GIMBAL / GOFAST 等の UAP 遭遇が頻発した艦。

Public DomainU.S. Navy / Public Domain出典(外部サイト・新しいタブで開く)
F/A-18F スーパーホーネット(VFA-103 ジョリーロジャース)

F/A-18F スーパーホーネット(VFA-103 ジョリーロジャース)。GIMBAL/GOFAST 映像を撮影した ATFLIR ポッドはこの機種に外部装着される。

Public DomainU.S. Navy / Public Domain出典(外部サイト・新しいタブで開く)
米国防総省(ペンタゴン)建物の航空写真

米国防総省(ペンタゴン、当時の正式名)建物。2020 年 4 月 27 日、この本部から FLIR1 / GIMBAL / GOFAST の 3 本の映像が UAP として正式公開された。

Public DomainU.S. Department of Defense / Public Domain出典(外部サイト・新しいタブで開く)

Section 01

事件概要

2014 年から 2015 年にかけて、米東海岸沖で訓練していた空母 USS セオドア・ルーズベルト 打撃群の F/A-18F スーパーホーネットのパイロットたちは、訓練のたびに UAP に遭遇するようになりました。新しい AESA レーダー(APG-79)の運用試験中だったこともあり、当初は 新型センサーの誤作動 を疑いました。

ところが 複数の機体・複数の日・複数のセンサー(レーダー、ATFLIR、肉眼)にわたって同様の物体が捕捉される ため、「センサー異常では説明できない」と認めざるを得なくなります。さらに、訓練空域 W-72 / W-50(バージニア沖)に 物体が居座って動かない ため、安全上のリスクとして艦隊司令部に報告される事案が増えていきました。

とくに有名になった 2 本の映像が、後に GIMBALGOFAST と呼ばれます。GIMBAL は 雲の上空で物体が静止しながら旋回する 約 35 秒の映像。乗員の交信音声には「あれを見てくれ、なあ」「全部風に逆らってる!艦隊の上を飛んでる!」という驚きの声が入っており、当時のリアルな反応が伝わります。

GOFAST は 2015 年 1 月 21 日に撮影された約 30 秒の映像で、海面のすぐ上を高速で横切る小さな物体 を ATFLIR が追跡したものです。当初パイロットたちは「秒速数百メートル」で動いていると考えましたが、後年の解析でカメラの追従角速度(カメラ自身がパイロット機の動きで揺れる)が大きく寄与 していることが判明し、物体自体の絶対速度は実は風速程度の可能性も指摘されています。

両映像は 2017 年に Tom DeLonge 率いる To The Stars Academy(TTSA)から非公式にリーク され、ニューヨーク・タイムズの 2017 年 12 月の報道と合わせて世論を動かしました。海軍は当初「真贋は確認できない」と曖昧な対応でしたが、2019 年 4 月に正式に UAP 報告手続きを策定、同年 9 月には海軍報道官が映像の真正性を確認しました。

そして 2020 年 4 月 27 日、米国防総省が FLIR1(ニミッツ)/ GIMBAL / GOFAST の 3 本を同時に正式公開。「これら映像は機密性のある能力・システムを開示しない」として、AARO の前身 UAPTF の活動と合わせて公的議題化されました。

海軍パイロットの一人、ライアン・グレイブス元中尉 は 2023 年の議会公聴会で「USS ルーズベルトの航海中、ほぼ毎日のように UAP に遭遇した」と証言。現役パイロットは UAP を報告することにスティグマ(汚名)を恐れている という、安全インシデントとして処理されない制度的問題も指摘しました。

AARO は 2024 年の歴史記録報告書 Volume I で、GIMBAL の旋回はジンバル機構の動作との相互作用、GOFAST の絶対速度は風速程度の可能性 という説明案を提示しています。一方で、これは「異星人ではない説明」を提示したのみで、物体そのものの正体(風船 / 鳥 / 大気現象 / 未知の何か)は依然として確定されていません。

Section 02

公開された文書

Section 03

タイムライン

  1. 2014

    USS ルーズベルトでの UAP 遭遇開始

    東海岸の訓練海域で複数日・複数機が遭遇

  2. 2015.01.21

    GOFAST 映像撮影

    海面を高速で横切る物体

  3. 2015

    GIMBAL 映像撮影

    雲上で旋回する物体

  4. 2017.12.16

    TTSA が GIMBAL を非公式公開

    Tom DeLonge の To The Stars Academy

  5. 2018.03

    TTSA が GOFAST を非公式公開

  6. 2019.04.23

    海軍が UAP 報告手続きを正式化

    司令部が UAP の正式報告経路を策定

  7. 2020.04.27

    国防総省が 3 本を正式公開

    FLIR1 / GIMBAL / GOFAST を「機密能力を開示しない」として解禁

  8. 2021.06.25

    ODNI 予備評価報告書

  9. 2023.07.26

    Grusch / Graves / Fravor が議会証言

    Graves が USS ルーズベルトの遭遇頻度を証言

  10. 2024.11.14

    AARO 2024 年次報告書

Section 04

当時の証言

「私たちは、ほぼ毎日のように UAP に遭遇した」

ライアン・グレイブス元中尉

USS ルーズベルトの F/A-18F パイロット(2014-2015)

oversight.house.gov(外部サイト・新しいタブで開く)
「Look at that thing, dude.(あれを見てくれ、なあ)」

(GIMBAL 映像内のパイロット会話)

F/A-18F 乗員(コックピット音声)

war.gov(外部サイト・新しいタブで開く)

Section 05

政府の公式見解の変遷

  1. 2017YEAR

    (公式立場なし。映像は TTSA から非公式に拡散)

    Navyaaro.mil(外部サイト・新しいタブで開く)
  2. 2019YEAR

    海軍が UAP 正式報告手続きを策定

    Navywar.gov(外部サイト・新しいタブで開く)
  3. 2020YEAR

    国防総省が 3 本の映像を正式公開、UAP 映像の真正性を認める

    DoDwar.gov(外部サイト・新しいタブで開く)
  4. 2021YEAR

    ODNI 予備評価で UAP を国家安全保障の懸念事案と位置づけ

    ODNIdni.gov(外部サイト・新しいタブで開く)
  5. 2024YEAR

    AARO は「GIMBAL の旋回はカメラのジンバル動作との相互作用、GOFAST の絶対速度は実は遅い可能性」と分析

    AAROmedia.defense.gov(外部サイト・新しいタブで開く)

KEY PEOPLE

主要人物

ライアン・グレイブス元中尉

USS ルーズベルト F/A-18F パイロット(2014-2015)

内部告発

東海岸訓練海域での UAP 遭遇を継続的に経験した現役パイロットの一人。退役後の 2019 年から公の場で UAP の安全インシデントとしての報告を訴え、2023 年議会公聴会で『現役パイロットは UAP を報告することにスティグマを恐れている』と制度的問題を証言した中心人物。

「私たちは、ほぼ毎日のように UAP に遭遇した」

ディートリッヒ大尉(Dietrich, GIMBAL 映像の乗員)

F/A-18F 乗員(GIMBAL 撮影機)

目撃者

GIMBAL 映像内のコックピット音声『あれを見てくれ、なあ』『艦隊の上を飛んでる』の主の一人。2017 年の TTSA 経由のリーク以降、複数のメディアインタビューで物体の異常さを証言。Tic Tac 事件の Alex Dietrich とは別人物。

Tom DeLonge

TTSA 設立者(元 Blink-182 ボーカル)

研究者

ロックバンド Blink-182 の元メンバー。2017 年に元国防・情報当局者を集めた To The Stars Academy(TTSA)を設立し、GIMBAL/GOFAST/FLIR1 の非公式公開を主導した。商業展開で物議を醸した一方、議論を世間に広めた功績は評価される。

ジョン・ラトクリフ氏

国家情報長官(DNI, 2020)

公式立場

国家情報長官として 2020 年の国防総省映像公開時に重要な役割を果たした人物。TV 出演で『公開された映像以外にも、さらに驚くべき UAP 報告が政府内にある』と発言したことで議論を加速させた。

Sean Kirkpatrick 博士

AARO 初代局長(2022-2024)

懐疑側

物理学者・元国防情報局副局長。AARO 初代局長として GIMBAL/GOFAST の科学的解析を主導し、『カメラのジンバル動作との相互作用』『視差効果による速度錯視』などの説明案を 2024 年報告書に整理した。

LEGACY · AFTERMATH

その後の影響

  1. 2017

    TTSA が GIMBAL を非公式公開

    12 月 16 日のニューヨーク・タイムズ報道と連動して GIMBAL 映像が世界に流出。

  2. 2018

    TTSA が GOFAST を非公式公開

    3 月、GOFAST 映像が同様に流出。海軍は当初『真贋は確認できない』と曖昧な対応。

  3. 2019

    海軍が UAP 報告手続きを正式化

    4 月 23 日、海軍司令部が UAP の正式報告経路を策定。安全インシデントとして扱う制度がついに完成。

  4. 2019

    海軍報道官が映像の真正性を確認

    9 月 17 日、海軍報道官 Joseph Gradisher が映像が UAP(未確認空中現象)であることを公的に認める。

  5. 2020

    国防総省が 3 本を正式公開

    4 月 27 日、FLIR1 / GIMBAL / GOFAST が機密解除されて公開。米軍が UAP 映像の真正性を公的に認めた最初の事例。

  6. 2022

    AARO 設立

    国防総省内に全領域異常解決局(AARO)が設置。UAP の正式調査機関が誕生。

  7. 2023

    Graves 議会証言

    ライアン・グレイブスが議会公聴会で『現役パイロットの報告スティグマ』を証言。制度の課題が公的議題に。

  8. 2024

    AARO 歴史記録報告書 Vol.1

    GIMBAL の旋回はジンバル機構の動作との相互作用、GOFAST の絶対速度は風速程度の可能性と分析。

VISUAL

図解

GIMBAL 映像内の物体の旋回軌跡ATFLIR · BLK / WHT · IRREC ●ALT: 25,000 ftT+00:35UAPROTATION OBSERVED物体は雲の上空で軸を傾けながら旋回AARO 解析: ATFLIR ジンバル機構の動きとの相互作用が回転を強調した可能性AARO Historical Record Report Vol.1 (2024)
Figure: GIMBAL 映像内の物体の旋回軌跡(赤外線追跡)
USS ルーズベルト訓練海域での遭遇報告頻度(推定)UAP ENCOUNTERS · USS ROOSEVELT東海岸訓練海域・パイロット遭遇報告(議会証言ベースの推定値)0102030件/月42014.0680712081809221017111412242015.01280219031104605推定値: 議会証言(Graves, 2023)に基づく頻度概算 — 公式統計ではない
Figure: USS ルーズベルト 2014-2015 年遭遇頻度
ジンバルロック現象による回転錯視の解説GIMBAL LOCK ILLUSION · AARO ANALYSIS物体が回転して見えても、実はカメラ機構が回転していた可能性FRAME 1 · T+0sF/A-18UAP (水平)カメラ角度: 0°機体動くFRAME 2 · T+15sUAP (傾いて見える)カメラ角度: 35° 強制回転さらにFRAME 3 · T+35s「回転している」ジンバルロック近傍カメラ機構の限界角AARO の解析仮説(2024)物体は実際には回転しておらず、機体の動きでカメラのジンバル機構が回ったため画面上で回転して見えた可能性出典: AARO Historical Record Report Vol.1 (2024 年 3 月) — 解析仮説。最終結論ではない
Figure: ジンバルロック現象 — カメラ機構が物体回転を強調する原理
GOFAST の速度錯視 — 視差効果による誤解の図解GOFAST · VELOCITY PARALLAX ILLUSION高速で動いているのは物体ではなく、カメラの追従動作(パン)の可能性F/A-18速度 200m/sATFLIR 視野角 (1.5°)海面 / SEA SURFACEUAP実速度: 風速程度?当初の解釈 (2017)「物体が秒速 100m+ で海面を高速走行」→ 異常な航空現象AARO 解析 (2024)「カメラの追従動作が高速移動を演出」→ 物体自体は風速程度の可能性
Figure: GOFAST の速度錯視 — 視差効果の解説

FREQUENTLY ASKED

よくある疑問

GIMBAL の物体は本当に回転していたの?

回転していたかどうかは依然として議論があります。AARO の 2024 年解析は『カメラ自身のジンバルロック近傍での動作が、画面上の回転を強調した可能性』を提示しています。この場合、物体は実際には回転しておらず、カメラが回転していたことになります。一方、パイロットの肉眼目視でも『何か不自然なものが空中にいた』ことは確かで、物体の存在自体は否定されていません。

GOFAST はそんなに速くなかった?

当初『秒速数百メートル』と報じられたが、後の解析で『実は風速程度かも』と修正されました。これは『追跡カメラが対象を画面中央に保つように動いた角速度』が物体の絶対速度として誤って解釈されていた可能性があります(視差効果)。ただしこれも『風船等の既知の物体だった』とは確定していません。

なぜパイロットは『ほぼ毎日』も UAP を見たの?

東海岸訓練海域 W-72 / W-50(バージニア沖)が、何らかの UAP の活動エリアだった可能性が指摘されています。一方、AESA レーダー(APG-79)の運用試験中だったことから『新型センサーが、それまで見えなかった気球・鳥・気象現象を検知し始めた』可能性も指摘されます。両説とも証拠はあり、結論は出ていません。

TTSA はなぜ非公式公開を?

Tom DeLonge と元国防当局者が『公的議論を起こすため』に非公式公開を選んだ とされます。彼らは正式な機密解除を待つと数十年単位で公開されないと判断し、機密に該当しない範囲のサンプルとして 3 本を流出させました。手段の是非は議論ありですが、結果として 3 年後の正式公開へと議論を加速させました。

AARO の説明を信じていいの?

AARO は科学的・中立的な立場の組織 ですが、批判もあります。Grusch(2023 年公聴会の内部告発者)は『AARO は調査範囲を限定されており、最も機密の高い SAP にはアクセスできない』と主張しました。AARO 自身も『証拠なし』と『証拠を否定する証拠あり』を区別しており、『現時点で証拠を確認できなかった』というのが正確な立場です。

なぜ報告にスティグマがあったの?

『UFO を見た』と言うと正気を疑われる文化 が米軍にも長らくあったためです。とくにパイロットは飛行適性審査があり、報告のせいで地上勤務にされる懸念が現実にありました。グレイブス証言以降、海軍は『正式報告は適性審査に影響しない』と保証する制度を整備しました。

REFERENCES

一次資料

全資料: 米連邦政府著作物(17 USC §105 によりパブリックドメイン)

最終更新: 2026 年 5 月 9 日